昭和の特許明細書には、触媒技術者の矜持が示されていた
この特許の明細書中に、以下のような言葉がある。
「白金のもっているような触媒作用は、独り白金のみに限ったことではなく、多かれ少なかれ大抵の固体、特に金属の表面はもっているものとされている(特願昭39−64710)」
この言葉に、触媒研究者としての矜持が感じられる。
白金(プラチナ)は確かに触媒として優れている。
しかし、工夫次第では、白金でなくとも同等以上の触媒作用を起こさせることができる。
触媒研究者、技術者としての腕の見せ所である。
この特許のテーマは内燃機関(自動車のエンジン)からの排ガスの処理。
排ガスに含まれる一酸化炭素、窒素酸化物、炭化水素などをさらに燃焼酸化して無害化することを課題としてる。
この特許には昭和40年当時の都市課題が書き込まれている
この明細書中には昭和40年前後数年の都市課題が、文章として書き込まれている。
「都市に集中して行動している自動車の大群によって都市の大気を著しく汚染しつつある」。
この特許で公開されている技術は、この時代の課題を正面から受け止めるものであった。
自動車産業は、日本の高度経済成長の中心にあった。
自動車に関連する産業は、すべて、自動車の販売台数の増加で恩恵を受けていた。
一方で、自動車が走るところでは、エンジンからの排ガスによる大気汚染という公害問題も引き起こしていた。
そのような大きな課題に立ち向かった技術開発の成果の一つが、この特許である。
提案されている触媒の独自性
自動車で使用する触媒に特有の課題は、移動しつつある自動車、という制約のある状況で機能しないといけない、ということである。
自動車は、いつも決まった気温のところを走るわけではない。
冬、北国では零下の気温となるし、夏は30℃以上にもなる。
日射の影響で、それ以上にもなりうる。
さらには、排気温度は数百℃から1000℃近くにもなる。
過酷な条件で、触媒は十分に機能を発揮しないといけない。
そのために提案されたのが、触媒自体に通電して加熱するということ。
触媒の材質はSiO2・Al2O3(シリカアルミナ)のハニカム。
白金その他の貴金属は使われていない。
このシリカアルミナのハニカム自体が半導体となっていて、これに電極と支持具によって通電できるようになっている。
通電し、予熱しておくことで、仮に外気が低温であったとしても、触媒は十分に排気ガス中の成分を分解、燃焼処理ができるようになる。
反応が進行し始めると、その多くは酸化反応なので、反応熱で十分に必要な温度が供給されるようになる。
このような通電による加熱の技術(電気加熱触媒の最近の例)は、現在にもつながる、自動車触媒における重要な技術となっている。
この発明の特許登録番号は「特許0516283」である。
JPlatPatでこの明細書を確認する方法
①以下のリンクからJPlatPatにアクセス
②サイト上部のメニューバー「特許・実用新案」を選ぶ
③「特許・実用新案案件照会/ODP」を選ぶ
④検索対象を「文献」、入力種別を「番号入力」とし、発行国・地域/発行機関を「日本(JP)」、番号種別を「特許出願番号」を選ぶ(初期設定はこうなっている)。
⑤番号の部分に「S39-064710」と入力する((-)の後ろは6桁にする)。
⑥検索結果一覧がページ下部に表示される。その中から広告番号の列のリンクを押す。
暖淡堂:触媒blog

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