触媒の定義 触媒じゃない例、立派な触媒の例

「触媒」には、定義がある。

20世紀初頭、ドイツのオストワルドによって、触媒は次のように定義された。

「触媒とは、化学反応の最終生成物に現れることなく、その速度を変化させる物質である。」

触媒化学 基礎から応用まで 田中、山下編著、講談社、p8」

(オストワルドと触媒の定期に関してはリンク先もご参照ください)

このうち、「化学反応の最終生成物に現れることなく」は、触媒自体が反応の中に反応物として取り込まれて、そのまま反応の生成物に含まれてしまうということがない、ということ。

「その速度を変化させる物質である。」は、その物質がなければ、ほとんど進行しないような反応を、その物質の存在のおかげで進行するようにさせる、ということ。

まあ、わかりにくい。

触媒ではない例:金属Na

例えば、水H2Oから水素H2を生成させる反応を考える。

2H2O → 2H2 + O2

この反応は、コップに水を入れて、眺めているだけでは進行しない。

ごく微少量ならば進行しているのかもしれないが、それで生成するH2もO2も利用できるほどの量にはならない。

このコップに、金属Naの小さなかけらを入れたとする。

すると結構な勢いでH2が発生する。

あまりに勢いがあるので、生成したH2が反応熱で発火、時には爆発することもある。

そのくらいの勢いがある。

これは、ただ眺めていただけでは進行しない反応を進行させている。

つまりは、反応の速度を変化させている。

しかし、「触媒」ではない。

なぜなら、このとき、金属Naは変化してしまい、生成物の中に現れるから。

2H2O + 2Na → H2 + 2NaOH

金属NaはH2Oと反応して水酸化ナトリウムNaOHになってしまっている。

激しく反応を起こさせるのだが、残念ながら、自分自身が反応に取り込まれてしまっている。

触媒の例:酸化チタンTiO2

酸化チタンTiO2は、今では「光触媒」としてよく知られている。

酸化チタンと白金をそれぞれ電極として水の中に入れ、酸化チタン側に光を当てると水が酸化されて酸素O2が発生する。

一方の白金側では水素H2が発生する。

このとき、酸化チタンも白金も、ほとんど変化していない。

生成物には取り込まれていないのだ。

ただ眺めているだけでは進行しない水の分解反応が、酸化チタンを用いた仕組みで進行するようになる。

かつ、酸化チタン自体は反応の生成物には取り込まれていない。

これは「触媒」だ。

特に、この場合は、酸化チタンとコンビを組んだ白金も触媒である。

こちらは「電極触媒」となっている。

酸化チタンも白金も、どちらも以下の反応式には登場しない。

オストワルドの定義によれば、どちらも立派な「触媒」である。

2H2O → 2H2 + O2


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